ソファの素材選び
ソファが一般的に使われるようになってきた19世紀の頃、ソファは非常に高価なものでした。また今のようなふわっとしたすわり心地もなく、くつろぐ上では今一歩足りないところもありました。そのため、もっとより安く、よりすわり心地のよいソファはないものかと、職人たちは大いに試行錯誤をしてきました。
当初ソファのスプリングに使われていたのは、コイルスプリングです。コイルスプリングは渦状のスプリングを並べて丈夫なひもや鉄線で結んだもので、底打ち感のないクッション性と優れた耐久性を持っているものです。また1本ずつのコイルも、巻きの大きな部分は柔らかく、巻きの小さな部分は固いという性質を持っているため、ソファにコイルスプリングを使用する際には巻きの小さな方を下に向け、巻きの大きな方を上に向けるように配置しました。このことによって、上から下に跳ね返るようなふわっとしたすわり心地を作るとともに、体はしっかりと受け止めてくれるというすわり心地を与えてくれます。しかし当時のソファにはこのコイルスプリングのごつごつ感を補ってくれるクッションがありませんでした。しかし何とかソファにくつろぎ感を与えるために、様々な素材をコイルスプリングの上に重ね合わせるという方法を取ったのです。コイルスプリングの上にはパームなどの固めの繊維を敷き、さらにその上にパンヤや馬毛などの柔らかい繊維を重ね、実際に座る綿にはより柔らかくて肌触りのよい羽毛を使ったりしたのです。こうして様々な工夫を重ねてソファの素材を改良していったのですが、その中でソファにとって目覚ましい発展を遂げた時期がありました。それは1960年代から1970年代にかけてです。この時代には、羽毛に代わってダクロンと呼ばれる化学繊維が開発されたり、釘に代わって大きなホッチキスの針が使える様になったり、コイルスプリングの代わりに今でいうS字スプリングが開発されたりしました。しかし中でも最大の開発されたものというと、ウレタンでした。ウレタンは石油を原料とする合成繊維のことで、今まではフェルやパーム、馬毛、羽毛などでクッション性を出していたものが、ウレタン1つで済むようになってしまったのです。これは、ソファ業界にとって、革命的ともいえるものでした。さらに時代が進んで開発も進むにつれて、ウレタンの型を機械で大量に簡単に作ることが出来るようになると、ウレタンと木枠をつなげて成型されたものにスプリングを入れるだけでよいといわれるくらい、簡単にできるソファも作られるようになりました。こうした試行錯誤の末、現代では良質なソファを手軽に使用できるようになっていったのです。
今では、スプリングの種類も豊富になりました。伝統的なコイルスプリングもまだ残っていますし、コイルスプリングの弾力感や耐久性は、今でもすぐれているとみなされています。現在ではコイルスプリングの利用法がさらに研究され、ポケットコイルスプリングという物も開発されました。ポケットコイルスプリングとは、コイルスプリングのようにそれぞれをひもや鉄線でつなぐ代わりに、コイルスプリングを1つずつポケット状の袋に入れることで、コイルスプリングに荷重がかかった時にそれ自体で重みの分散が行なえるようにしました。ポケットコイルスプリングによって、体の形に添って弾力性が得られるようになり、よりすわり心地をよくすることが出来たのです。またコイルスプリングの他にも、S字スプリングなるものも開発されました。これはS字の鋼製のばねを連結棒でつないでいるもので、座面を薄く、軽くすることが出来ました。そしてこのことによって、おしゃれなソファが次々に作られるようになったのです。弾力性という面ではコイルスプリングよりも劣ってしまうのですが、座面を山形に作ることでへたれるのを防ぐなどの工夫がなされています。現在最も多くのソファに使われているスプリングは、ウェービングテープといわれるものです。糸に巻いた細いゴムをソファの内面で編んだもので、これによってさらに軽さを増し、ソファのデザイン性を高めることにもつながりました。また価格もぐっと低くできるようになったので、一般的にソファを買えるようにもなってきたのです。ただし、耐久性や弾力性という点でどうしても劣ってしまうので、長時間の利用は体に疲労をためることがあります。